ウグメン子抱かしゅう【ウグメンコダカシュウ】
◯地域
◯概要
墓原丁には町でも一番古い墓所がある。その中を一本会所の方と、藤井の方に抜けている路が通っている。すぐ先には光運寺というお寺があって、墓石がたくさん並んで建っている。ある晩の事、隣り丁のおよしという若い嫁が、急いで家に戻ろうと恐る恐るそこを歩いて一本の大きな椋の傍まで来ると、突然その木下から赤子を抱いた女の幽霊が現れて「ウグメン子ば、抱かしゅ」と言って、その赤子をおよしさんに抱かせて、またその木下に消えていった。
またある晩、名物の飴屋に髪を振り乱した女の幽霊が現れて、一文がた飴がたを買って消え、それが6日目の晩になって「もう銭がないので、飴は買いに来られん」と泣いて帰った。飴屋は怪しんでその後をつけていくと、墓原の椋の木の陰に消えていった。そしてその墓原の中から女の子の泣く声がするので、掘ってみると死んだ女の腹から赤ちゃんが生まれており、飴をなめていた。幽霊は飴を買って赤子を養っていたのだ。
今でも臨月で死んだ女はすぐ埋葬してはならんという言い伝えがあり、また約束をしておいてそれを果たさずにいると「ぬしゃ、おれにウグメン子ば抱かせたばいね」といわれる。
今回は、産女と子育て幽霊の両方を兼ね備えた話になっています。熊本でも子育て幽霊の話は昔話として口伝されていますが、両例とも母と子の特性を持つため、伝承される過程で混淆していったのでしょうか。
熊本で産女の類は「〇〇抱かしゅ」と呼称される事例が散見され、同様に以下の怪異があります。
・産女の子抱かしゅ(益城町)
・赤子抱かしゅ(熊本市西区)
・ウブメ(南阿蘇村)
また本怪異はウブメではなくウグメと呼称されています。熊本には同名の怪異が伝承されていますが、そちらは船幽霊の類です。
・ウグメ(深海町)
◯参考文献
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