轟淵の乙姫【トドロキブチノオトヒメ】
〇伝承地
八代郡泉村(現・八代市泉町)
○概要
昔、和助という美男子がおり、村の女たちの憧れの的であったが、和助は見向きもしなかった。
釣り好きな和助はある日、古屋敷部落にある轟淵に釣りに行った。しかし魚は多くいるものの全然釣れない。日が沈む頃、水面に映るニッコリと笑った女の顔に気がついた。見たこともない気品高き美しい女の顔に魅せられて、それ以来仕事は手につかず、毎日釣竿をもって淵に行っては水面ばかり見ていた。その様子を見て村人らは和助の気が違ったと噂した。
お盆の日、相も変わらず水面を見ていると、件の女がニッコリ笑って手招きをする。和助は躍り上がって喜び、そのまま淵に飛び込み上がってくることは無かった。村人たちは和助が竜宮の乙姫の婿になったと噂した。
その後、淵のたもとにあるシイの巨木に毎晩火が灯るようになったという。
村人たちは正月28日と8月15日の年に2回注連縄を張り、灯りを点したと伝えられる。『管内実態調査書第5(城南編)』
◯参考文献
『管内実態調査書第5(城南編)』熊本県警察本部警務部教養課 1962年
牛島盛光編著『肥後の伝説』第一法規出版株式会社 1974年9月
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