幽霊屋敷【ユウレイヤシキ】
◯地域
飽託郡天明村(現・熊本市南区)
◯概要
某村の旧家での事。主人が目を覚ますのと、隣に寝ていた妻が頻りに唸っている。「どうした、どうした」と揺すり起こすと、妻は「今、髪振り乱した若い女の幽霊に首を絞められていた」という。そんな馬鹿なことがあるかと、二人で起き上がってふと床の間を眺めると、若い女が後向きに座っていた。これは主人の乱行に愛想をつかして自殺した先妻の亡霊の仕業らしい。
純情可憐な農家の妻は貞節であった。しかし、男は淫乱であったという。界隈の後家、遊女、売女と金に任せて遊蕩三昧で、気紛れにも家に帰らぬ日が続き、果てはこれみよがしに、名も知れぬ女を夜遅くに連れ込むまでになった。妻の心中はいかがだったか。そうしたある年の瀬の十二月末、世間では正月もすぐだというのに宵闇せまる黄昏時、墓所の石場で胸を突いて死んでしまった。
後妻は幾度か連れ込まれたが、これも日ならずして出奔してしまった。一人二人までは噂も立たなかったが、3人目の後妻では誰言うとなく幽霊話が流布された。来る女も、また来る女もその幽霊に悩まされたという。しばらくしてその家は空き家になり、幽霊屋敷と言うようになった。
某村、というのは天明村に合併する前の、飽託郡内の村であるのか、当時の怪談の一種なのか。
飽託郡は、現在の熊本市南区の有明海に面する地域です。
上記の地域の項は、伝承地である天明村として記載しました。
◯参考文献
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