天狗の隠れ蓑【テングノカクレミノ】
◯地域
◯概要
町役場より100米程南側を陣山といい、楠の生い茂る森のところを袖山と呼んで恐れていた。なぜなら夕方そこを通ると天狗が出て赤い衣の袖を道に垂らすからである。
この村に母と二人暮らしの甚兵衛という大の酒好きがいて、オロシを顔に当てて袖山に行き「天狗さん、天狗さん」と呼んだ。「なんだ甚兵衛、天狗がいるのがジンベン分かったな」「そらこぎゃん目の多かつで見とるけんたい」そうして天狗の隠れ蓑とオロシの交換に成功した甚兵衛は、隠れ蓑を着て酒を飲みに歩くようになった。
母が蓑を火にくべた後もその灰を身にこすりつけて飲みに行く。酔って帰宅の途中、先に酒を飲んだ口元の灰が取れ宙に口と歯だけが浮いて歩く姿を道に行く人々はお化けと騒いだという。自宅の裏口から入った甚兵衛は、母に古狸と間違えられスリコギで殴られると、歯無しになったという。
◯参考文献
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