石棺の精女【セキカンノセイジョ】
◯地域
◯概要
猪の窪というところに、いつの頃よりとも知らず一つの古墳があった。古墳には墓石もなく、ただ山石が1、2個あるだけであった。
宝暦の初め頃、ある農夫が誤ってその墳墓を壊してしまった。そこに石棺が現れて、その中に年齢16、17歳の大層美しい娘が綺麗な衣服を纏って、スヤスヤと眠っていた。
今にも目を明けて言葉を掛けそうな程の生々しい姿に驚き、一時は気を失いかけたが「これは大変な事になった。このまま逃げ帰ったら、石棺に眠る美女の霊が現れて、元の通りに丁寧に葬ってくれと言うに違いない。それを拒んでしまえば、自分や子孫だけでなく村人にまで累が及ぶ。」そう思った農夫は、恐る恐る元の通りに石棺の蓋をして古墳に納めたという。
里人たちは、古墳の石棺の中の骸が、顔は化粧を施し、綺麗な着物を纏った美しい娘であり、正に今葬ったかの様な姿に驚いて、これは確かに日ノ岡の精に違いないという事になった。それ以降、古墳には手を触れずに大切に供養をしているという。
◯参考文献
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