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天草四郎時貞の妖術

天草四郎時貞の妖術【アマクサシロウトキサダノヨウジュツ】


◯地域


◯概要

天草四郎が寛永14年の乱を企てたとき、下浦村にやって来て、切支丹に一臂の力添えを願った。庄屋は、かねてより遅れている切支丹と聞いて、すぐに返答はできず、熟考の上でと断った。けれども最初から加担の意志のない庄屋は、また訪ねられては困ると、密かに家を出て妻と幼児と3人で、人の知らぬ山中の洞穴に身を潜めた。

庄屋の家にまた四郎がやって来た。庄屋がいない事を知ると怒って、方々を探し始めた。そしてついに庄屋の居場所をつきとめた。庄屋はしまったと穴を抜けて脱兎の如く逃げ出した。けれども妻と幼児を連れていては思うように走れない。仕方なく幼児を藪の中に捨ててしまった。それから妻と一緒に急坂にかかって這って逃げた。

さて、やっとのことで頂上まで逃れて下を見ると、四郎はかの捨てた幼児を槍の穂先に突き刺して差し上げた。

それから四郎は、さっきの穴に帰り、「こんなところにまた人が隠れぬよう、隠れても分かるように目印をつけておこう」と伴天連の妖術で、その穴の上に松の種子を一掴み振り撒くと、たちまち大きな松が数十本となく生えそろったという。

庄屋が幼児を捨てた場所を「見捨て藪」、妻と這って逃げた急坂を「這坂(ひゃーざか)」という。また例の穴を調べてみると、実は円塚式古墳である(下浦村東外園)。


 

協力しないからとブチギレて、幼児を槍で突き刺し掲げる四郎も四郎だが、思うように逃げきれぬと幼児を捨てる庄屋も畜生です。


 

◯参考文献

濱田隆一『天草島民俗誌』郷土研究社 1932年

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