琴平様の御神火【コトヒラサマノゴシンカ】
◯地域
◯概要
今から130年ほど前の話である。
ある日、赤崎の兼平というお爺さんが大浦の親戚の家から帰っており、須子の家なみを過ぎて「めぐろ」にかかった頃、太陽が急に西の山向こうに落ちるように沈んでしまった。小さな孫を連れていたので途方に暮れてしまった。
「ああ、灯りを借りてくればよかったな」と独り言を言っていると、5,6メートルほど先の方に、ぼーっと灯りが現れてきた。驚きながらもその不思議な火に誘われるように歩き出すと、火も進んでいく。急いで行けば火も急ぐという。こちらが止まれば、おいでおいでというように止まって待っている。本当に不思議なこともあるものだと考えながら、とうとう家近くまで来てしまった。「やれやれ、おかげで助かった」と、ほっとしたとたん、火はスーッと消えてしまった。その様子は琴平宮の祠の中に吸い込まれるように見えたという。
兼平の爺さんは勿論、その話を聞いた村の人は以前にも増して琴平様へのお参りを欠かさなかった。
それからだいぶたって、大浦で流行り風邪が流行した。親類の事を心配した兼平爺さんが訪れると「悪病がうつるといけないから、どうか今日は家にはいらんで帰ってくだっせな」と、家の中から声がする。「何の、わしには琴平様がついてくださるから大丈夫だ」と上がり込むと、一家そろって病人でげっそりしているではないか。それから二日経った大浦の親類の人が元気な足取りでニコニコしながらお礼参りに見えた。人々はその不思議な力に驚き感心したという。
◯参考文献
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