あさごぜ婆さん【アサゴゼバアサン】
◯地域
◯概要
山田の小池村のあさごぜ婆さんは、琵琶を弾くのが上手だった。ごぜというのは琵琶を弾く人のことをいう。
あさござ婆さんの息子は猟が好きで、冬、田畑の仕事がなくなるとよく山へ出かけた。
ある日のこと、山の中で人の声がする。近づいてみると、人語を話す大化猫だった。今にも飛びかかってきそうだったので、息子は銃を構え、思わず引き金を引いてしまった。手応えはあった。
家に帰ってみると、母親は身体の具合が悪いといいながら布団をかぶって寝ている。
「魚が食べたい」と言うので、買ってきて食わせると大層喜んだが、身体の具合はなかなか良くならず、医者を呼んでも布団から顔を出そうとない。
どうも様子がおかしいので、医者と2人で布団を剥いでみると、大化猫がうずくまっていた。正体を見られた化猫は飛び跳ねて逃げだした。
化猫は、息子に撃たれた傷が痛むらしく、足を引きずりながら坂道を駆け登っていった。
化猫は仕返しに来たのだった。あさごぜ婆さんを食い殺した上、婆さんの声色を使って息子を騙し、油断しているところで襲いかかるつもりだったのだろう。
その後、大化猫はついぞ姿を見せなくなった。この大化猫の逃げて行った坂道を、誰言うともなく“あさごぜ坂”というようになった。
◯参考文献
高橋佳也 文・坂本福治 絵『阿蘇の昔むかし 白川の民話』建築省立野ダム工事事務所 1999年
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