鐘が淵の大亀【カネガブチノオオガメ】
◯地域
菊池市北宮
◯概要
昔、肥後国で大旱魃があった。長く雨は降らず、来る日も来る日も、目の回る様なカンカン照りの日々が続いた。
ある日、菊池川の畔に住む、貧しい百姓の与作どんは、あまりの暑さにたまりかねて、鐘が淵へ降りて行った。しかし、鐘が淵も打ち続く旱により、すっかり干上がっていた。
与作どんは、どこかひと掬いでも水が溜まっていないかと、岩から岩へ、探し回った。すると、日にやけた河原に、1匹の小さな亀が、息も絶え絶えになって転がっていた。
そして、ふと横を見ると、大きな岩陰に僅かな水溜りが残っていた。「小亀は、そこへ行く途中で、歩けなくなったのだろう。」そう思うと小亀が可哀想になり、自分も喉がカラカラに渇いて気が狂いそうだったが、水溜りに小亀を放してやった。小亀はみるみる生気を取り戻したが、与作どんはとうとう水が飲めずに我が家へ帰った。
それからも雨は一向に降らなかった。2、3日して、与作どんがまた鐘が淵へ降りて行くと、小亀を放してやった岩陰から、渾々と清水が湧き出ている。与作どんは大急ぎで村人達に知らせて走った。近郷近在の人々を救った事は言うまでもない。
それ以来、雨の欲しい時分に雨の降らない場合には、菊池川の鮎を捕まえて北宮神社に供え、お宮をぐるぐる回って、雨乞いをするのが、村人達の習慣になった。なんでも年寄りの話では、鐘が淵にはバッチョ笠程の大亀が住んでいて、昔は岡に登って甲羅を干しているのをよく見たと言う。村人は、それを見てあの時の小亀が、千年も万年も生きているのだろうと噂をしている。
北宮神社は、正式名称北宮阿蘇神社と呼ばれ、菊池武朝が阿蘇北宮を勧請して氏神としたと伝えられます。
やはり阿蘇神話と亀は繋がりが深いです。
◯参考文献
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