狐の琵琶坊主【キツネノビワボウズ】
◯地域
◯概要
昔、ある人が西ノ原の先の長浦の川の辺りを通っていると、1匹の狐が一心に藻を頭からかぶっていた。妙なことをするなと隠れて見ていると、立派な琵琶坊主になった。「ははー狐のやつ、こんな風に人を化かすのだな」と思って、その人は狐の後をつけて行った。狐の琵琶坊主は、立派な琵琶を背負って、何処かへ急いで行った。
少し行くと立派な町に来た。そして1軒の家に入って、琵琶を弾き語りはじめた。狐はどんな琵琶を語るのかと、暖簾の隙間からのぞいて聞いてみると、なかなか上手だった。
だが正体を知っているその人は黙っていられず「おいそやつは狐だぞ、おいそいつは狐だぞ」と言いながら暖簾を押し分けて家の中に入って行こうかとすると、後から「そんなことをしてると馬から蹴られるぞ」と喚かれて気が付くと築後三池郡の境の山である廣野の真ん中で、馬の尻尾の毛をかきあげて馬の股ぐらを覗いてみていたという。
青森県五戸町にも同じ話が伝わるとのこと。
◯参考文献
能田太郎「玉名郡昔話㈡-熊本県玉名郡南関町-」『昔話研究⑵』民間伝承の会 1935年
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