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太郎じゃどん

  • 百怪堂
  • 2023年8月25日
  • 読了時間: 2分

太郎じゃどん【タロジャドン】


◯地域

玉名郡大原村(現・南関町)


◯概要

昔、相ノ谷の坂谷に、太郎じゃどんという狐がいた。

ある時、村の者4、5人が参宮しようと思い立ち、太郎じゃどんも連れていくことにした。太郎じゃどんは「関ノ町には犬がいるから、おれは福山越えをしていくよ」と言って、町はずれの宮野前で一緒になった。

それから段々行って、馬関(門司)から舟で行った。舟に乗ったとき、太郎じゃどんは、わざわざ一度水の中に入ってから飛び乗った。それを見た船頭たちは「これは狐だな。舟に狐が乗ると決して難破しないから、世話なし」と喜んだ。それから無事に参宮は済み、町へと戻ってきた。

関ノ町近くまでくると、太郎じゃどんは犬がいるからと、また福山越えし、他の者も町で買物して中山の先まで来て、そこで待っていた。それから一緒になり、無事に戻ってきたので同行祝いしようじゃないかということで話が決まった。そうすると、太郎じゃどんが「それなら俺の家に呼ぶよ。」という。

狐に招かれるのも変なものだと思い行ってみると、坂谷に立派な家が建っていて、広い座敷には、もう御馳走がいっぱい並んでいた。遠慮なしに食べてみてもどれも本物で、どれも甘くて、酒も上等だった。腹いっぱい御馳走になって、戻ろうとすると太郎じゃどんは「御馳走は皆遠慮せずに持って行け」というので、皆で包んだり懐中に入れたり袂に入れたりして表に出ると、しゅーろ雨(静かに降る小雨)が降っていた。皆、困っていると太郎じゃどんは「傘をやろう」と言うが、戻って来るのが厄介だからと言うと、返しに来る必要はないと新しい蛇の目傘を貸した。

それをさして、坂谷から坂を登って、肥猪(こえ)の街を通りかかると、女や子供が出てきて自分たちを見て笑う。

それもそのはず。自分たちがさしていた傘は芋の葉で、雨などは少しも降っていなかったのだ。この様子では、土産の御馳走も何か分からないと出してみると、それは本物であった。

あとで聞いてみると、その晩、近所の家で祝儀の酒と御馳走が皆なくなっていたという。


◯参考文献

能田太郎「玉名郡昔話㈡-熊本県玉名郡南関町-」『昔話研究⑵』民間伝承の会 1935年


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