鏡が淵の竜【カネガブチノリュウ】
◯地域
◯概要
若い器量のよい人妻がいて、はじめは人のうらやむ程の仲の良い夫婦であった。時が経つにつれ、夫は家を空けるようになり、浮気をはじめた。妻は煩悶の末、ついに発狂して淵に身を投じ水死した。そしてその女は、龍となってこの淵に姿を現し、夫に復讐をしようとした。見かねた父が「お前が夫を恨んで死んだことはよく分かるが、その姿ではお前も可哀そうだ、どうか父の言うことを聞いてくれ」と涙を流して諭した。「お父さん。よく分かりました。私は夫への恨みを晴らすことでいっぱいでしたが、今はもうそのことをやめて、水の精となって、村の人へ恩を返します。干ばつの時に、雨乞をする際は、この渕に鏡を沈めてください。きっと雨を降らします。」と言って、渕の中へ姿を消した。
以来、鐘が淵に雨乞のため鏡を投じ祈念する行事が明治初年まで続いた。近年に至って、全く途絶えてしまった。
◯参考文献
『管内実態調査書.熊本編』熊本県警察本部警務部教養課 1961年
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