魔の子【マノコ】
〇地域
天草地方
〇概要
異類の子を孕む話が天草にもある。
昔、ある家の娘が誰にも知られず腹が大きくなった。不思議に思って医者に見せると、子供を産むと言った。親は娘に通う男を見届けようと思って乳母に番をさせたが誰も来ない。その相手は娘にだけ見えているが、どこの誰かは分からない。乳母場一計を案じて、今度その男が来たらこの針を男の襟にそっと刺しておきなさいと言って糸を通した木綿針を渡した。
ある晩、男が来たので娘は言われた通りに針を刺した。するとその糸はずっと引きずられている。乳母はその糸を辿って行くと、堤を越えて池の底に向かっている。乳母は不思議に思って見ると、水の中から話し声が漏れて、「どうしてか」と言う。続いて「お前は金気を持って来ている。」と言うのが聞こえ「それでも俺は子供を持つぞ」「何!子供を持つ、しかし人間は智慧が多いから、魔の子は3月の桃の酒と5月の菖蒲の酒で下ろしてしまう。」と聞こえる。
男の素性と同時に魔の子の処置法まで知った乳母は、早速帰って菖蒲酒を飲ませると腹の子は下がってしまった。
5月5日に菖蒲酒を飲むのは河童の魔を除けるためであるという。
〇参考文献
濱田隆一『天草島民俗誌』郷土研究社 1932年
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