鬼牛【オニウシ】
◯地域
阿蘇郡波野村(現・阿蘇市波野)
◯概要
昔、阿蘇外輪の高原、主に九重山と祖母山には多くの獣が棲んでいた。そして春ともなれば冬ごもりをしていた野牛や鹿、猪、狸などが九重山からこの波野の高原に群をなして降りてきて、祖母山の猪や狼、狐のところに遊びに行った。
またある時は祖母山の方の獣たちが九重山の方に遊びに出かけることもあった。このように波野高原は獣たちの通路であり遊び場であった。
ある時、祖母山から九重山に、ぞろぞろと獣たちが群をなして移動していたとき、そのそばを1人の坊さんが通りかかった。すると、その獣の中に大きな角を持った鬼牛が、急に坊さんに突きかかった。坊さんは大変腹を立てて、持っていた薙刀で鬼牛の首を切り落とした。
それ以来、そこを通る人や飼牛が魔風にあたって病気になり死んでしまうことが度々起こった。
これは自分が殺した鬼牛の悪霊の仕業であろうと坊さんは千部の経を書いてその地に埋めて塚を造り鬼牛の霊を弔ったのでその後は祟りがなくなったという。
波多野村小園と産山村境に千部塚があり、その近所に牛首というところがある。そこは牛の首を切り落とした場所だといわれている。
◯参考文献
『管内実態調査書.阿蘇編』熊本県警察本部警務部教養課 1959年
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