さけん松【サケンマツ】
◯地域
◯概要
御領と佐伊津の境に”さけん松”というのがある。境の松の佐伊津訛りである。
この松の木に大きな足が下がるというので、ある剛胆な男が、俺が退治して見せると言って出かけた。そして出るときに、うちの者にけして心配して迎えに来るなと言った。
来てみると話の通りとても大きな足がぶらりと不気味にぶら下がっている。刀で首尾よく切り落として帰りかけると、向こうから提灯が来る。近づいてみると自分の家の下男であった。
下男は主人の顔色を窺いながら「あなたは何か恐ろしいものにお会いになったでしょう」と言った。いや何も会っていないと否定すると、「けれども顔色が悪うございます。きっとお会いになったに相違ありません。」と言うので、さっきの大きな足の話をすると、下男は自分の着物の裾をまくって、「これ位大きかったか」と言った。見るとそれはさっきの足そっくりであった。さてはまた出やがったなこ今度も一刀で斬り伏せた。
そして後も見ずに小串の方へ下りて川端まで来ると、誰かが鍬を洗っている。それは自分の乳母であった。
乳母がまた、「顔色が悪いのでどうしたのですか」と聞く。男が今までの話をすると、「これ位大きかったか」と乳母が差し出した足はまた素晴らしい大きなものであった。男は遂に「君らには勝てぬ。許してくれ。」と降参して「どうか家まで頼むから案内してくれ」と言うと、ぱっと火が灯って家まで案内してくれた。門まで来ると犬が急に吠え立て、火はフッと消えて見えなくなってしまった。
その男は後で、色々のご馳走を拵えてその松の根の所へ持って行き、御礼をしたという。
再度の怪です。
◯参考文献
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