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新墓の幽霊

新墓の幽霊【アラハカノユウレイ】


◯地域


旧銭塘列組合村の某墓地に幽霊が出るという噂が流れていた。毎晩12時を過ぎると新墓の四方棺から抜け出るといわれる。白装束で口に火を咥えていると言われた。


逞しい力自慢の某は幽霊の正体見たり枯れ尾花だと、高をくくって雨の日に待っていた。風もないのに首筋が慄然としたと思ったら、棺が揺らいだ。そう思う間に白い物がふわりふわりと棺から抜け出した。某は最初の元気は背筋から抜けてしまって、足も動けないようになったがその晩はそのまま帰宅した。


村は本物の幽霊であるという話で持ちきりになった。某は、また翌晩の同時刻同場所に立ってみた。前夜の様子からすると腑に落ちない節がある。幽霊には足がないといわれるが、棺から出た時に音がしたという。気のせいかと思ったが、やはり夜中12時になると同じ墓地から白装束が出てうごめいている。10分ほど様子をうかがっていたが、棺に戻る気配がない。それに何かの度に咳声が聞こえる。はては幽霊に声があるのかしらと近づいてみたら近所の某女ではないか。身には白無垢を纏い、髪はオンボロに振り乱し、今にもと言いたげな形相であった。


某女は数カ月来、夫の乱行に精神錯乱、人の怖がる真夜中、それも堀土の香も新しい墓地を選んでの狂言であったいう。『天明村史』



 

正に、幽霊の正体見たり枯れ尾花。

いや、これはこれで怖いな。


 

◯参考文献

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