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百怪堂

アマビエ

アマビエ


◯掲載

京都大学附属図書館蔵、弘化3年4月中旬刊行の木版画


◯地域

肥後国海上


◯概要

京都大学附属図書館に収蔵される木版画に描かれる。この木版画の刊行は弘化3年とされ、左面には“アマビエ”の絵が描れ、右面には以下の内容の文章が記される。


”弘化三年(1846年)、肥後の海上に毎夜光るものが出たという。土地の役人が行ってみると海中から怪しい化け物が現れた。その姿は人魚のようだが、髪が長く、顔には鳥のような嘴がある。役人が驚いていると「私はアマビエという者である。当年から6年の間は諸国で豊作がある。しかし、疫病が流行れば、私の写しを早々に見せよ」と言い残し再び海中に潜ったという。”


このアマビエが記される瓦版および木版画は、これ以外に発見されておらず。疫病の予言をし、姿を見せよとは言い残すが、疫病が鎮まるかどうかは定かではない。


・形状

木版画に描かれる姿は、顔は左を向き、髪は全身を覆うほどの長髪、目は菱形で口は嘴のように描かれる。手はなく、胴は魚のようである。足は尾びれのようであり、3股に分かれている。


・昭和、平成におけるアマビエ

これの初出は、1960年に雄山閣出版より刊行された小野秀雄著『かわら版物語:江戸時代マス・コミの歴史(風俗文化双書;第1)』とみられる。本書では、動物関係の珍談奇談の一例として「怪物アマビエ」と紹介されている。

以降では、水木しげるが妖怪画として描いたことで、好事家のみならず広範で知られることとなった。『決定版 日本妖怪大全 妖怪・あの世・神様』など、水木の手がけた書物では、「件など予言獣の親類か、あるいは神に近い神怪と呼ぶべき者であろう」と独自の解釈を述べている。

また1991年講談社より刊行の水木しげる『日本妖怪大全』では、本文タイトルともに”アマエビ”と誤植状態で刊行されたため、この名で覚えていた読者もいたようだ。


さて、時代が進むにつれ、湯本豪一などにより様々な調査が行われ、江戸や明治以降「予言する怪物」の瓦版や新聞記事などが多数発見された。一例として、尼彦、あま彦、アマビコ、尼彦入道、天彦、アリエ、左立領など。どれも共通して、肥後周辺に現れ、怪光を放ち、豊作と疫病の予言を残し、そして自分の姿を見せよと言い残し消える。

湯本豪一は自著の『明治妖怪新聞』内のコラム「妖怪『アマビエ』の正体」で、類似するアマビコの誤記ではないかと指摘しており、以上の例を見ても、この湯本説が有力であろう。

その他にも、オカルト研究家の山口敏太郎は自身のYouTubeチャンネルにおいて「全国を渡り歩く薬売りが創作したゆるキャラのような存在で、薬を買えばついてくるようなものだったのではないか。」との見解を示し、加えて「そのルーツは海幸彦、3本の足は八咫烏からきている」と述べている。



・令和におけるアマビエ

令和時代、2020年新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう中、このアマビエが注目を集めた。「疫病を予言」「この姿を描き見せよ」という要素に疫病退散の御利益を見いだし、TwitterをはじめとするSNSでアマビエの創作物をアップする「アマビエチャレンジ」が興り、厚生労働省も感染拡大の啓発キャラクターとしてアマビエ(画像反転)を採用したりと、その名は一躍全国区となった。


この広がりはアマビエにとどまらず、「予言する怪物」そのものが再注目を集めることとなった。

いまでは、町中でその姿を見ることができる。


 

さて、アマビエです。どこまでどうまとめるべきか悩んでいたのもありますが、学のなさが露呈することを恐れ、投稿していませんでした。

不足、間違いなど多々あるかと思いますので、その時は「全然違うよ」とか「糞餓鬼が」など、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします。


尼彦やアリエなども今後取扱っていけたらと思っています。

江津湖には”あまび~”なる存在もいるようですが、それはまた別のおはなしです。

 

〇参考文献

小野秀雄 著『かわら版物語:江戸時代マス・コミの歴史(風俗文化双書;第1)』雄山閣出版 1960年


水木しげる『日本妖怪大全』講談社 1991年


湯本豪一 編『明治妖怪新聞』柏書房 1999年


村上健司 編著 『妖怪事典』毎日新聞出版 2000年


湯本豪一 編 『地方発明治妖怪ニュース』柏書房 2001年


長野栄俊 著・小松和彦 編「予言獣アマビコ・再考」『妖怪文化研究の最前線(妖怪文化叢書)』 せりか書房 2009年


水木しげる『決定版 日本妖怪大全 妖怪・あの世・神様』講談社 2014年2月


常光徹『歴博ブックレット31 予言する妖怪』一般財団法人 歴史民俗博物館振興会 2016年10月


withnews「ネットの話題 水木しげるさんの妖怪大全「アマエビ」誤記の謎」(更新日2020.07.06)


Bintarou Turtle Company Yamaguchi「ATLASラジオ2nd 92 海幸彦が妖怪アマビエに零落した?!」YouTube (更新日2020.03.17)


彦根商工会議所「特集 妖怪「アマビエ」」(更新日)


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