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油ずまし

更新日:2022年8月16日

油ずまし【アブラズマシ】


◯地域



◯概要

栖本村字河内と下浦村の境に草隅越というところがある。

ある時、1人の老婆が孫の手を引きながらここを通り、昔、油ずましが出おったという話を思い出し「ここに昔油瓶さげたとん出よらいたちゆぞ」と言うと「今も––––出る––––ぞ––––」と言って出てきた。



 

“油ずまし”と“油すまし”

柳田國男は『妖怪名彙』にて、『天草島民俗誌』を参考に“油ずまし”を引いているが、本著では「アブラスマシ」と表記されている。恐らく誤植であると思われる。

以降、水木しげるが“油すまし”の名で妖怪画として描き、著作『ゲゲゲの鬼太郎』などに登場させた事で、この柳田名が全国区となった。


怪異としての油すまし

柳田國男は、前段として「肥後天草島の草隅越という山路では、こういう名の化け物が出る。」と断っているが、『天草島民俗誌』には化け物であると明記されていない。

他方で『妖怪馬鹿』において小説家の京極夏彦は、原典に載る「油瓶さげたとん」という一文が、怪異自体の説明であり、名の通り「油瓶が下がる怪」なのではないかと推測している。

しかし「油瓶下げたとん」というのは「油瓶を下げたのが」という意味である為、下がる怪異とするには、少し違和感が残る言い回しである。


由来について

『妖怪名彙』『全国妖怪事典』では「スマシの意味は不明である」とあるが、天草地方の方言で、“絞る”というのを“すめる”と言う。

天草の各地で「かたし油」と言って、椿やサザンカなどの実から油が絞られていた。特に河内地区ではかたし油作りが盛んだったという事から、“すめる”が“すまし”となり、濁って“ずまし”となったとする説もある。


 

◯参考文献






『日本伝承大鑑』「油すましの墓」(最終閲覧日2022年8月10日)

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