赤池【アカイケ】
〇伝承地
熊本県阿蘇郡長陽村(現・南阿蘇村)
〇概要
長陽村下野、阿蘇の西登山口近くにある赤池は、ひと月のうちに7日は必ず赤く濁るという。昔からこの池には女竜が棲んでいると伝えられ、いつしか赤く濁るのは女竜の月経だろうということになった。竜については他にも伝説がある。
昔、阿蘇家の者と名乗る若者が矢部郷(上益城郡)で土地の豪族の娘と恋仲になり、二人は固く後日を約束し、若者は一旦阿蘇へ帰った。ところが、その後、なかなか迎えに来ないので、娘は母親と共に若者の元へ行こうとこの池まで来ると、娘は突然吸い込まれるように池の中に消えていった。驚いた母親が途方に暮れていると、水面に顔を出した娘はニッコリと笑って再び水中に没したので、母が「なぜ池に入ったのか今一度顔を見せてくれ」と哀願すると一天にわかにかき曇り、池の水が波立ち、一匹の竜が母の顔を見ながら黒雲と共に昇天した。
実は娘と恋仲になった若者の正体は、この赤池に住む男竜の化身だったのである。この池に来た時、母には見えないが、娘には水面に恋しい若者の姿が見え飛び込んだと伝わる。
部落の祭りには、この伝説に因み、若い娘の手拍子・足拍子に合わせて竜が躍る”蛇舞い”が奉納される。
また旱魃の際にこの池の水を使ったら原因不明の怪火で部落が全焼したという話も伝わる。
7日赤く濁る=女竜の月経という発想が面白いです。
〇参考文献
牛島盛光編著『肥後の伝説』第一法規出版株式会社 1974年9月
熊本県小学校教育研究会国語部会編『熊本の伝説』日本標準 1978年1月
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