ガゴ
◯地域
熊本県南部
◯概要
ガゴというのは妖怪や変化に類する化け物および怪物の一般名称である。
「ガゴが出るぞ」と子どもを脅すと、怖がって夜は一歩も外を出なかったという。
八代郡下松求麻村(現・八代市坂本町)では、雪の中にいる怪物として“ユキガゴジョ”の言い伝えが残る。
また丸山学『熊本県民俗事典』では、芦北地方の話もいくつか採録されており、”ヤマワロ”などの山怪のことを”ガゴ”と呼ぶという。
元興寺の妖怪話が地方に伝わり、元興寺が変化して“ガゴ”と呼ぶようになったと考えられる。
『人吉球磨の民話・伝承話集 第1巻 (九州相良むかしがたり』には、実際にガゴが出たという話も残っている。系統としては、”油ずまし”などの「いまも系」の話である。
人吉市大畑町
江戸末期頃、大畑の町に若い男女が住んでいた。
2人とも仲が良く、町の評判も良かった。
やがて2人にも子どもができ、愛情も深まっていったが、女の方は産後の肥立が悪く、まもなく他界した。
男は毎日悲しみに暮れていたが、問題は授乳である。幸いに、麓町にほどよく貰い乳をする嫁さんがおり、子供はすくすくと育っていた。
ある夜のこと、このときに限って子どもがしきりに泣く。「今夜も程よく乳をもらえればよいが」と心に念じながら、麓の家を訪ねたのであったが、嫁さんは里帰りをしており不在であった。
男は泣く子をあやして我が家へと急いだ。
麓からの急坂は夜になると危ない。この坂のちょうど半ばごろ、空腹に耐えかねるように子どもが大声で泣き出した。
男は「そのよん泣けば、ガゴがうち来るっぞ」と怒鳴った。
その時である。闇の中から「ガゴはこきぃ居っぞ」と八つ手の葉のような大きな手を広げながら、子どもの手を掴むかのように大きな影が現れた。
男は驚き、子どもを強く抱きしめながら、一目散に坂を駆け上がったという。
それ以来、ここをガゴ坂と呼ぶようになった。
現在の大畑保育園のところから、麓の深い迫への道であるが、今はその坂道はない。
さて、ガゴです。
こちらも“インガミ”と同じく、まだ集めきれていないうちのひとつです。
どうまとめたものか悩んでいましたが、まあいいだろうという、なんとも見切り発車ならぬ見切り投稿です。
現在のガゴ話も探したいですね。
随時追加します。
◯参考文献
丸山学『熊本民俗事典』日本談義社1965年
人吉市制50周年事業実行委員会編『人吉球磨の民話・伝承話集 第1巻 (九州相良むかしがたり』人吉市 1992
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